三島の決意

  即(すなわ)ち、三島の本を読んで、不純な汚濁(よごれ)だらけの世界に生きることを潔(いさぎよ)く拒否して発狂した人、生きる希望を失い呻吟(うめき)と絶望の果てに他者に危害を加えることだけを恐れて自殺する人間への文責を自己の肉体でとったのだ。
 自殺する人間は自分を救済することなんて全然考えていない。死の直前のある一瞬に、神や悪魔のささやきを聞く、絶対の虚無(きょむ)の真っ白い空白を見る、漆黒(くろい)の闇の底にへばりついた垢の臭気を嗅ぐ、そしてすべての宇宙と同化し一体となる。彼等は自らに与えられた肉体を捨象(す)て、進んで死者の行列(マトリックス)に参集する決意をする。彼らこそ、自分のすべてを捨て去る雄雄しい勇気を持った気高い心優しい人々なのだ。
 お腹の底から笑い、心ゆくまで涙を流し、三島が遠い宇宙の果てから盗んで来た言葉に心揺(ゆ)すられた人、彼独特の皮肉に微笑(ほほえ)んだ人、彼の一字一句を人生の指針とした人、三島の思想に共鳴し命を捨てた若者、少女のふと流した一雫(ひとしずく)の清らな真珠、少年の紅潮(顔が赤くなり)と高揚(心臓がドキドキ高まって)、そして凛凛(りり)しい決意・・。彼は彼に関わった、これから関わるであろう読者に対して、文責を果たした。読者の喉元に匕首(あいくち)を突きつける以上、自らも清冽な覚悟を示した。彼は人間というものはこういうものだよと、舞台上の役者の見得を切って大向こうを唸(うな)らせる心意気だったのだろう。

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